イギリス英語の代表的な特徴

このネイティブリスニングでは、イギリス英語の話し手の音声も多く収録されているので、イギリス英語もしっかりトレーニングできるようになっていますが、イギリス英語の代表的な特徴をここでまとめておきたいと思います。

1)[ɑ]の発音が[ɒ]と発音される。

[ɒ]は[ɑ]よりも唇が丸みを帯びて、より響きが「オ」に近くなっている音です。[ɑ]は「ア」に近い響きがある音でしたが、[ɒ]は「オ」に近い響きのある音です。([ɑ]の発音については、ここを参照)

1 hot[hɑ́t]が[hɒ́t]

hot[hɑ́t](米)

2 box[bɑ́ks]が[bɒ́ks]

box[bɑ́ks](米)

3 God[gɑ́d]が[gɒ́d]

God[gɑ́d](米)

のように発音されます。

hotが「ホット[hɒ́t]」、dogが「ドッグ[dɒ́g」、godが「ゴット[gɒ́d]」のように発音されるため、よりローマ字読みに近い感じになります。(もちろん、あくまでローマ字読みに近いだけで、同じではありません。ここまで学習された方はおわかりだと思います。)

ここで、実際の発音の例を聞いてみましょう。

I got up at ten o’clock in the morning.

【解説】

gotが[gɒt]と発音されている。

2)語中・語尾の[r]の音が消える。

イギリス英語では、語尾の[r]の音が消えるのが顕著な特徴です。

例えば、次のような形で語尾の[r]の音が消えます。

例:

[ə:r]が[ə:]に

[ər]が[ə]に

[ɔ:r]が[ɔ:]に

[ɪər]が[ɪə]に

実際の例を聞いてみましょう。

例1:

Actually, I wanted a perfect score.

【解説】

perfectが[pə́:rfekt]ではなく、[ə:r]が[ə:]となり、[pə́:fekt]と発音されている。

例2:

Do you think it’s worth reading?

【解説】

worthが[wə́:rθ]ではなく、[ə:r]が[ə:]となり、[wə́:θ]と発音されている。

例3:

I have a hundred here.

【解説】

here[hɪ́ər]が[hɪ́ə]となっている。

3)[eər]の発音が[eə]あるいは[e]と発音される。

前項に関連する点ですが、イギリス英語には、[eər]の発音が[eə]あるいは[e]と発音されるという特徴があります。

例:

air[éər]が、[éə]あるいは[é]

hair[héər]が、[héə]あるいは[hé]

care[kéər]が、[kéə]あるいは[ké]

のようになります。特に、[é]や[hé]や[ké]と言われると一瞬何のことが戸惑ってしまうと思いますが、イギリスでは一般的な発音なので押さえておきましょう。

イギリス英語は、イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドで地域差が大きく、また、イングランドやスコットランドなどの中でも違いが大きいので、一口にイギリス英語はこうです、とまとめることはできませんが、イギリスで比較的多く耳にする発音には、上記のような特徴があります。

また、地域差や個人差はありますが、母音に挟まれた[t]の音が「ッ」と発音される訛りもあります。以下でそれを確認しましょう。

4)母音に挟まれた[t]の破裂がなくなり、喉に詰まった「ッ」のような発音になる。

以下の例を聞いてみましょう。

better

letter

betterは、[t]の破裂がなくなり、「ベッアー」、letterは「レッアー」のように発音されていますね。

このように、母音に挟まれた[t]の音が、のどに詰まった「ッ」のように発音されることがあります。

ちなみに、この発音をするコツは、「ゲット」と言ってみて、その際に「ト」を言わずにその前で止めることで、小さい「ッ」を言うことができます。やってみてください。

【練習】

イギリス英語の上記の特徴が含まれた音声を聞き取る練習をしてみましょう。

1)英・米

Dude, you got so drunk last night.
gotの中の「o」の音は、[ɒ]と発音されている。
君、昨夜はずいぶん酔っぱらっていたね。*dudeは人に呼びかける言い方で「おいきみ」のような意味。

2)英

What are you doing here?
here[hɪ́ər]の中の語尾の「r」の音がなくなり、[hɪ́ə]と発音されている。
ここで何してるの?

3)英・米

Now I see how much you care.
care[kéər]の中の語尾の「r」の音がなくなり、[kéə]と発音されている。
あなたがどれだけ気にかけているかがわかりました。

4)英・英

A: You should wear a hat. It’s very cold outside.
B: I don’t want to ruin my hair.
A: You’ll ruin a lot more than your hair if you freeze!
Bのhair[héər]の中の語尾の「r」の音がなくなり、またその前の[ə]の音もかなり弱くなり、[hé(ə)]のように発音されている。
A: 帽子をかぶったほうがいいわ。外はとても寒いから。
B: 髪型を台無しにしたくないの。
A: 凍えたら、台無しになるのは髪型だけじゃないわよ。

5)英

Spend time with people who make your life better.
better[bétər]の中の語尾の「r」の音がなくなり、[bétə]と発音されている。
あなたの人生をより良くしてくれる人たちと過ごしてください。

6)英・英

A: What’s your favorite color?
B: I like the color red. What about you?
A: I like orange. It’s my favorite color and my favorite fruit.
color[kʌ́lər]の中の語尾の「r」の音がなくなり、[kʌ́lə]と発音されている。
A: あなたの好きな色は何色?
B:私は赤が好き。あなたはどう?
A:私はオレンジが好き。好きな色だし、好きな果物でもあるし。

7)英・米

A: My dog ate my husband’s shoes!
B: You need to train him better.
A: I did! He knows be(tt)er than to eat my shoes.
最後のAのセリフの中のbetterでは、[t]が母音に挟まれているので変化し、小さい「ッ」のように発音され、「ベッアー」のようになっている。
A: うちの犬が主人の靴を食べちゃったんです!
B: もっとちゃんとしつけなきゃだめだよ。
A: しつけましたよ。彼は私の靴を食べない方がいいってわかってるんだから。
*know better than to ~は「~ほどばかでない、~より分別がある、~しないことくらいわきまえている」という意味。